胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎など、消化器の炎症の治療にも討ち入られているネキシウムという薬があります。普段から健康な人には聞き慣れない薬の名前ですが、消化器系の炎症の症状に悩まされている人にとってはネキシウムとはどんな治療薬で、どういった効果があり、副作用はどうようなものが考えられるのかという点は大変興味のある部分です。

ネキシウムの効果と副作用について

ネキシウムは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍また逆流性食道炎など消化器の炎症の治療には高い効果を示す薬です。
とくに胃酸の分泌を抑制する作用には優れている薬です。

ネキシウムは「プロトンポンプ阻害薬」と呼ばれる薬で、胃の中で胃酸の分泌をコントロールしているプロトンポンプという酵素に直接作用して、その働きを抑制する働きをもっています。
また強力に胃酸分泌を抑制することからヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療に補助薬としても使用されている薬です。

従来の胃酸抑制薬にくらべ、優れた胃酸分泌の抑制だけでなく、その効果が長時間持続することや副作用が少なく副作用があらわれる頻度も低い特徴を持ち安全な薬として高い評価を得ています。
そのため多くの医療機関では消化性潰瘍治療の第1選択薬として選ばれています。

逆流性食道炎と胃潰瘍の症状と治療についてネキシウムの効果と副作用を見てみましょう。

逆流性食道炎の症状とは?

何らかの原因で胃の内容物とともに胃酸が逆流して、食道の粘膜にただれや潰瘍ができる病気が逆流性食道炎です。
食道は口から入った食べ物を胃へ送るための管で一方通行です。
そのために食道と胃とのつなぎ目(ふん門)にある下部食道括約筋を開け閉めして、食べ物を胃に送り込みまた胃から食道に逆流しないようにしています。

胃には強い酸から粘膜を守るための防御機能が備わっていますが、食道には逆流した胃酸に対する防御機能がないため、粘膜が強い酸にさらされます。
その結果、粘膜に炎症を起こしただれや潰瘍が生じることになります。
症状が進むと「食道がん」など重大な合併症を発症するおそれがあります。

逆流性食道炎はかつては欧米で多く見られた病気で日本では少なかったのですが、最近になって日本人の食生活の変化や高齢化が進んだことから増加する傾向にあります。
60歳以上の高齢者に多くどちらかといえば女性に多い病気です。

症状は、「胸やけ」「呑酸」「胸の痛み、締め付け」「咳込み」「のどの違和感、声がれ」などがあり、横になったりかがんだ姿勢になると症状があらわれやすくなります。
多く見られる症状は「胸やけ、呑酸」です。
胸に焼けるような不快感を伴った痛みやすっぱい液体が口まで上がってきてゲップが出たりします。
また逆流した胃酸がのどや気管支を刺激して咳込んだり声をからすこともあります。
こうした症状がつづくと、夜ぐっすり眠れなかったり、気分がすぐれず食欲不振になるなど仕事や日常生活に支障をきたすことになります。

逆流性食道炎が起こる原因は何でしょうか。
それは「胃液の過剰分泌」「下部食道括約筋の衰え」「腹圧の上昇」などが原因と考えられています。

食生活の欧米化が進み、肉や脂肪分の多い食べ物を日常的に食べていると胃の活動が活発になりすぎて、胃酸の分泌が増加し逆流が起きやすくなります。
また食べ過ぎも胃の活動を活発にして胃酸の分泌を増やすことになります。

また歳をとると次第に下部食道括約筋の働きが衰えて逆流が起こりやすくなります。
また食道のぜん動運動も少なくなり胃から逆流した胃液をすばやく胃に戻す力が弱くなってきます。

ベルトで腹部を強く締め付けたり、重いものを持ったりして腹部に強い圧力をかけると胃が圧迫され逆流しやすくなります。
肥満も腹圧を上昇させる原因と考えられています。
その他、背中が曲がった人も腹部を圧迫するため逆流が起こりやすくします。

またピロリ菌の除菌治療後、6~8カ月して逆流性食道炎が起こるケースがありますが、これは一時的な症状でピロリ菌の除去治療に伴い下部食道括約筋の働きをコントロールする神経に乱れが生じて起きると考えられています。

逆流性食道炎の治療は、生活習慣の改善と薬剤による治療を並行して行うのが一般的です。
ほとんどの場合はこれらの治療で食道の炎症や潰瘍などの症状は改善されますが、まれに内視鏡を使った手術を行う場合もあります。

生活習慣の改善では、食生活の見直しを行います。
肉や脂肪分の多い食べ物は控えめにして、水分補給を適切に刺激の少ないものを腹八分目にしましょう。
また腹圧の上昇を抑えるため、ベルトをきつく締めつけないことや無理に重いものを持たないまた肥満にも気を付けるようにしましょう。

薬剤による治療では胃酸の分泌を抑える薬を使用します。
ネキシウムは逆流性食道炎の治療には高い効果をもつ薬です。
プロトンポンプの活動を抑制し逆流性食道炎の主な原因である胃酸の分泌を強力に抑制します。
逆流性食道炎の治療には「ヒスタミン受容体拮抗薬」が使われることもあります。
この薬は、ヒスタミン受容体がヒスタミンと結合して胃酸を分泌させる働きをするのですが、ヒスタミンが受容体と結合するのを防いで胃酸の分泌を抑える薬です。
しかしネキシウムの方がはるかに強力に分泌を抑える効果があります。

また逆流性食道炎は再発しやすい病気です。
治療を途中で中止した人の約90%が6か月以内に再発したとする調査データがあります。
医師の指導を守り、処方通りの用法・用量を守ることが重要です。

下痢が続くなら膠原繊維性大腸炎かもしれない?

プロトンポンプ阻害薬を長期間服用していた人のなかから「膠原繊維性大腸炎」と診断されるケースが出てきています。

「膠原繊維性大腸炎」は、突然水の様な下痢の症状があらわれ、症状がなかなか改善せず長期間にわたり繰り返し続く病気です。
これまでは日本ではまれにしか見ない病気だとされていましたが、最近になって徐々に増えている病気で中高年の女性に多いのが特徴です。

原因と発症の仕組みはまだ不明で、自然に症状がおさまるケースもありますが、ほとんどの場合は再発するようです。
治療方法もまだ確立されていない厄介な病気です。
しかも病気を診断することもむつかしく、通常の診察や検査また内視鏡検査では異状は認められず「過敏性腸症候群」と誤って診断されてしまうことも多いようです。
内視鏡を使って大腸粘膜組織を採取し顕微鏡で観察して行う生体検査ではじめて確定できることから「顕微鏡的大腸炎」とも呼ばれています。

最近になって膠原繊維性大腸炎は、大腸粘膜の内側の部分にある膠原繊維帯(コラーゲンバンド)が増殖し炎症を起こし、大腸からの水の吸収を妨害するために起きる慢性の下痢症状を伴う大腸炎であることがわかってきました。
原因はまだ明らかになっていませんが、色々な薬とこの病気の関係が徐々に分かってきました。

膠原繊維性大腸炎と関係があると報告されている薬は「プロトンポンプ阻害薬」や「NSAIDs」と呼ばれる抗炎症薬、鎮痛剤、解熱剤などです。
「プロトンポンプ阻害薬」では「ランソプラゾール」を成分とする薬の報告が多く、異なるタイプの「エプソプラゾール」を成分とする薬であるネキシウムでは報告はありません。
これは「ランソプラゾール」を成分とする薬の使用量が多いからの結果だという意見と、プロトンポンプ阻害薬のタイプによって差異があるとの意見があります。

これらの分類に含まれる薬を長期間服用していて、下痢や腹痛の症状が続くようなら膠原繊維性大腸炎かも知れません。

治療方法は未確立ですが、該当する薬の服用を中止して1週間~1カ月で症状が改善するケースが多く報告されています。
それで症状の改善が見られなかった場合は、潰瘍性大腸炎用の薬剤を処方されるケースがあります。

ここでネキシウムの副作用について見ていきましょう。
ネキシウムは副作用は比較的少なく、頻度も低い薬です。
承認申請時の副作用臨床試験データが公開されており、そのデータによると胃潰瘍や十二指腸潰瘍また逆流性食道炎の治療であらわれた副作用の確率は11.5%、抗炎症薬や鎮痛剤、解熱剤などが原因の逆流性食道炎の治療の場合は14.5%となっています。

服用した人のおおよそ11~14%の確率で副作用があらわれるという結果です。
やや高い確率という印象ですがそのほとんどが軽症の副作用です。
比較的多い副作用は消化器に関連したもので、確率はそれぞれ1%未満ですが、腹痛、下痢、吐き気、便秘などがあります。
下痢や便秘の症状が出た場合には水分補給が必要になります。
これらの症状はほとんど軽症で症状は短期間で改善されています。
まれなケースとして水の様な下痢が長期間続くようであれば「膠原線維性大腸炎」の可能性を疑ってみるべきでしょう。

肝臓に関係する副作用も報告されています。
肝機能及び肝細胞に関する数値(AST(GOT)、ALT(GPT)、AL-P、LDH、y-GDP、肝機能及び肝細胞の状態をあらわす指数)が上昇するケースは1~5%の確率で報告されています。
ネキシウムは肝臓で分解される薬なので数値が上昇することがあるようです。

ネキシウムを服用する前から、これらの数値が高い場合には注意をし医師に相談するようにしましょう。
なお脂肪肝や肝炎、肝硬変など肝臓に疾患のある人も医師とよく相談し医師の指示に従うようにしましょう。

また1%未満の確率ですが、眠気におそわれるケースも報告されています。
眠気が出てきて仕事や車の運転に支障がでるようであれば服用する時間を変えることも必要になります。
また眠気覚ましにコーヒーなどカフェインを含んだ飲み物を飲むことは良くありません。
カフェインはプロトンポンプを刺激して胃酸の分泌を促進する効果があり、病状を悪化させることになるからです。

胃潰瘍の症状について

胃潰瘍は日本人に多い病気です。
40代以上の人に発症しやすい傾向があります。
胃潰瘍は胃壁がただれて傷つき胃の粘膜が破壊された状態をいいます。

胃潰瘍の主な症状は、まず胃の痛みがあります。
多くの人がみぞおちに痛みを感じます。
発症した2/3以上の人が上腹部に鈍い痛みやみぞおちに疼くような焼けるような不快感を訴えます。
みぞおちの痛みは食後1時間から1時間半過ぎたころに強く感じるようです。

また胃もたれや食欲不振また吐き気などの症状も見られます。
胃潰瘍の症状が進み胃壁に穴があくようになると胃に出血して「吐血」や「下血」の症状や貧血の症状がみられるようになります。
吐血は胃液が混ざってどす黒い血を吐きます。
下血はタール便といわれ気付かない場合もあります。

その他に「背中の痛み」「酸っぱいゲップ、胸やけ」などの症状が出る場合もあります。

胃潰瘍の原因は「ピロリ菌」「ストレス」「生活習慣の乱れ」などです。
最近になって胃潰瘍の1番の原因はピロリ菌であると考えられています。
胃潰瘍患者の約80%からピロリ菌の感染が確認されています。
「ピロリ菌」は胃の粘膜の中に棲みついている病原菌で、日本人の50代以上の80%を超える人が感染しているといわれています。

ピロリ菌が胃の粘膜に感染すると炎症が起こります。
この感染が長く続くと胃の粘膜全体に広がり慢性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)となります。
この慢性胃炎が胃潰瘍、十二指腸潰瘍また萎縮性胃炎を引き起こすのです。

ピロリ菌は胃酸によって強い酸性になっている胃の中でどのようにして棲みついているのでしょうか。
ピロリ菌は自分で胃の中にある尿素からアルカリ性物質のアンモニアをつくります。
このアンモニアによって周囲にバリアを張って強い酸を中和して生き延びているのです。

「ストレス」が直接胃潰瘍の原因ではありませんが、強いストレスは自律神経を乱れさせ胃にダメージを与えてしまいます。
ストレスを感じると交感神経が活発になり、胃酸が過剰に分泌されます。
過剰な胃酸が粘膜を刺激しただれや潰瘍を引き起こすことになります。

「生活習慣の乱れ」も胃潰瘍の原因となります。
暴飲暴食、早食いなどは胃に大きな負担を与えてしまいます。
胃は食べ物を消化するため過剰な活動をし胃液の分泌を行い胃酸が多くなってきます。
辛い物や香辛料のとり過ぎも胃酸の分泌を促します。
またタバコを吸う人の胃潰瘍発症率はタバコを吸わない人の3~4倍との調査データもあります。
お酒もアルコールが胃酸の分泌を促すこととタンパク質を固める作用があり胃の粘膜を直接破壊することから胃潰瘍の原因となります。

その他鎮痛剤や抗炎症薬などの薬を長期間服用することも胃潰瘍の原因となります。

胃潰瘍の治療は最近ではよほどの重症ではに限りほとんど手術をせずに、薬で治療できるようになりました。
まずピロリ菌の感染があるかどうかのチェックをします。
この検査は内視鏡を使った検査と使わない検査があります。
医師と相談して決めましょう。

ピロリ菌の感染が確認されればピロリ菌の除菌治療を行います。
ネキシウムなどプロトンポンプ阻害薬と2種類の抗生剤を1日2回、7日間服用します。
1回の治療で70~90%は除菌ができ、除菌できなかった場合は2回目の治療を行います。
ネキシウムが使用されるのは、抗生剤は酸性の条件では効果が出にくいためネキシウムの強い胃酸の分泌抑制によって中和するためです。

ピロリ菌の除菌治療が終われば、胃潰瘍の治療を行います。
治療は生活習慣の改善と薬物治療を並行して行います。
暴飲暴食や過労やストレスなど胃潰瘍の原因となっていた生活習慣を改善して、禁煙やお酒を控えること及び胃酸の分泌を促すような食べ物や香辛料を控え、規則正しい食生活を心がけます。

薬物治療では、胃酸の分泌を抑制する薬と胃の粘膜を修復する薬の2種類の薬を服用します。
完治後も再発を予防するため医師の指示に従い薬の服用を続けます。

出血性の胃潰瘍の場合は手術による治療を行うことがあります。
多くは内視鏡を使った手術でまれに開腹手術を行うケースもあります。